『進撃の巨人』は原作単行本が累計発行部2000万部を突破している大人気作だ。そのTVアニメの前期および後期オープニングテーマを担当しているLinked HorizonことRevoと、後期エンディングテーマに起用された4ピースバンドcinema staffによる対談が、ここに実現した。

音楽性こそ異なる二組だが、それぞれのフィルターを通して生み出された音楽は、ブレることなく『進撃の巨人』の世界観を的確に表現したもの。原作との親和性が高く、ストーリーの持つ魅力を高揚感を掻き立てながら伝える役割を存分に果たしている。なお両者は、<Linked Horizonトーク&ライブイベント「自由への進撃」>での共演を機に親交を深めている。それぞれにとっての『進撃の巨人』、そして音楽観について、互いへのリスペクトが溢れ出したレアなトークセッションをお届けしたい。

■このまま自分の音楽を続けていけばいいんだなって──Revo
■アニメと音楽が凄くマッチしていて、さすがプロの仕事だなと──飯田

──Revoさんは“Linked Horizon”名義でTVアニメ『進撃の巨人』オープニングテーマを担当していらっしゃいますが、まず、このLinked Horizonの活動をご説明いただけますか?

Revo:いつもは“Sound Horizon”名義で活動しているんですが、Sound Horizonは僕が原作のような物語も作っていて。そこに歌ものとして落とし込んで音楽でストーリーを伝えていくグループなんです。一方のLinked Horizonは、タイアップした外部の作品を原作として、それをどう歌に落とし込んでいくか、という違いがありますね。

──なるほど。原作の源がご自身であるか、それとも他者であるか、そこに大きな違いがあるわけですね。Linked Horizon 名義でリリースした「自由への進撃」が初週12万枚を売り上げ、シングルチャート初登場第2位を記録する大ヒットとなりました。2013年4月からアニメ『進撃の巨人』のTV放送が開始されて、オープニングテーマ曲「紅蓮の弓矢」も充分に認知された上での発売になったわけですが、この反響についてはどのように感じましたか?

Revo:本当にありがたいことです。いろいろな場所で「紅蓮の弓矢」がかかっていたり、たくさんの方から「聴いてます!」と言われたり、その反響の大きさは感じていたんですけど。とはいえCDを実際に出して売れなかったらどうしよう?とは思っていたんです(笑)。それがありがたいことにしっかりとした結果が数字として出たので、今は少し胸をなで下ろしているというか(笑)。

──かなりプレッシャーを感じていたと?

Revo:『進撃の巨人』が累計2000万部を超えるベストセラーになっているということは、自分の音楽を知らない人たちも聴いてくれる可能性が非常に高い。そこで改めて問われる部分があったというか。細々とやっていれば好きになってくれる人たちだけのコアなコミュニティが出来ますけど、そこから飛び出していったら、風当りも強くなりますよね。でも、そうしないとより広く聴いてもらえないことも確か。数字がすべてではないですけど、多くの人に認めてもらえたというのは励みになりました。このまま自分の音楽を続けていけばいいんだなって。

──原作との親和性に対する評価も高いですね。

Revo:それにこの曲、レコーディングに凄くお金がかかってるんです(笑)。

cinema staff:ははは(笑)。

Revo:cinema staffだったらバンドサウンドで完結させているから、4人じゃないですか。この音源はレコーディングに86人ものアーティストたちを呼んだものだから(笑)。

飯田:凄いな〜(笑)。

──「自由への進撃」は生のオーケストレーションが楽しめる作品に仕上がっています。

Revo:採算という意味でも、ある程度売れなければいけない。僕はこういうスタイルでやっている以上、いろいろな人を呼んで様々な世界観を作り出したいので。その自由度を保つために、売れるということは必要条件だと思います。“売れないけど好きなことをやってるからいい”とはまったく思っていないんです。

──cinema staffのみなさんはRevoさんの音楽制作に対する姿勢や音楽性そのものについてどう感じていますか?

飯田:僕は『進撃の巨人』を元々読んでいて。アニメも楽しみにしていたんですけど、放送が開始された時に見たらアニメと音楽が凄くマッチしていて、さすがプロの仕事だなと思いました。

──cinema staffが後期のエンディングテーマ曲「great escape」を制作する上でも、Linked Horizonと同じような世界観を目指そうという気持ちが?

三島:制作自体は放送開始前から始まっていたんですね。でもRevoさんのオープニングを見て、“これは帯を締めなおさないといけないな”みたいな気持ちはありましたね。この作品の一部になることの重みを感じました。

久野:アニメ本編を含めて、トータルクオリティが高い作品ですし、Revoさんの作品を見て、これに関わるということはただごとじゃないなと余計に思いましたね。

──ところで、そもそも『進撃の巨人』は原作から愛読されてました?

Revo:僕は『別冊少年マガジン』連載開始時から読んでいたんですよ。最初はわけわからずに読み始めたわけですけど、凄く引き込まれて、どんどん続きが気になった。後々自分が関わることになるとは知る由もなく、“エレン死んだけど大丈夫か!?”と諫山さんの手の平の上で翻弄されてましたね(笑)。

cinema staff:ははははは(笑)。

Revo:エレンの遺志を継いだミカサが頑張っていきますという話なのかな、と思ってました(笑)。

久野:アニメの制作発表があった時も、僕らは原作のファンとして普通に楽しみにしてたんですよ。映像がYouTubeに上がれば「マジかよ、立体起動はこうなるのか!?」とかメンバー同士で話してたくらいで。まさか自分たちがそこに関わることになるとは思ってなかったんです(笑)。

三島:2013年2月くらいまで、cinema staffは『望郷』というアルバムのレコーディングに入ってまして。ひと段落した頃に、「『進撃の巨人』のタイアップ話があるんです」と聞いたんですね。もっと早く教えて欲しかった(笑)。

久野:最初話を聞いたときは震えました、携帯持つ手が(笑)。

飯田:「早くいろんな人に言いてぇ〜!」って。曲もまだ出来てないのに(笑)。

■再び「紅蓮の弓矢」に繋がるという物語性を描きたかった──Revo
■ここまでメロディが立った曲はあまりなかったかもしれない──三島

──では、Linked Horizonのマキシシングル『自由への進撃』の全体的なコンセプトを教えていただけますか?

Revo:前期オープニング曲「紅蓮の弓矢」の制作はこちらとしても手探りで。ただ、自分としては『進撃の巨人』への熱い想いもあって、それをカタチにしようと。戦争ものだし、軍隊が出てくる緊張感は意識して、スネアの「ダン、ダダダッダン」という行進曲調のものを入れたり、クワイア(聖歌隊)を入れたり。そういうカタチでサウンドイメージを捉えていたんです。しかし、それ以前に主人公ですよね。人類対巨人というテーマはあるけれども、まずその意志も含め、主人公をしっかり明確にしておきたいと思った。そこで、「イェーガー」という一節を入れたら、「“イェーガー”が良いよね」と、行く先々で言われるので。結果的に成功したなと(笑)。

cinema staff:はははははは!(笑)。

Revo:「イェーガー」という響きが好きで本当に何気なく入れたんですよね。ただこの言葉は主人公の名前の他にも意味がある。ドイツ語で狩人、猟師という意味を持つ言葉でもあるんです。

──アニメ制作側からの要望はありましたか? たとえば“こういうキーワードを入れてほしい”みたいな。

Revo:キーワードではないんですけど、「強い言葉が欲しい」と言われて。考えた結果、「紅蓮の弓矢」という言葉が出てきたんです。サウンド的には、「紅蓮の弓矢」は1曲目だし、凄くキャッチ―なものを目指しました。“アニソンとは何か?”も含めて、みんなで熱く燃える曲として、凄くわかりやすく提示した。そういう意味では、「自由の翼」はもう少しマニアックなものでも良いかなと。

──3曲目に収録された「もしこの壁の中が一軒の家だとしたら」では女性ボーカリストとして柳麻美さんが参加しています。

Revo:「紅蓮の弓矢」と「自由の翼」がオープニング曲なので、疾走感やサウンドの派手さはもうお腹いっぱいかなと。だから敢えてずらしました。それに曲構成も1分半では切れないようなロングスパンで展開していく曲にしようと。それは最初から考えていましたね。でも、こじんまりとせず、壮大に広がって行くような部分がある。それが収縮して再び「紅蓮の弓矢」に繋がるという物語性を描きたかった。ただの曲では終わりたくないというか、最後まで『進撃の巨人』と噛んでいるものにしたかったという。

──完全に音楽が『進撃の巨人』とリンクしている印象です。cinema staffのみなさんは「自由への進撃」を聴いてどのような感想を持ちました?

三島:僕らはバンドしかやってきていないので、あんまり音を重ねるということを経験してないんです。Revoさんの中で鳴ってる音……80人以上が出す音を構築するということと、それを作品としてカタチにするということが本当に凄い。完璧に出来ているということが最初に聴いた感想ですね。加えて、原作への愛情、リスペクトがもう本当溢れてて。

──ではcinema staffが担当した後期エンディングテーマ「great escape」ですが、この曲はプロデューサーとして亀田誠治さんが参加されていますが?

三島:アルバム『望郷』をレコーディングしているときに、なにげなくディレクターと“第三者の方に見てもらうのもいいんじゃない?”みたいなことを話していた伏線があったんです。その直後に『進撃の巨人』のエンディングテーマを担当することが決まって、“このタイミングでプロデューサーつけてみるのも面白い”という話になったんですよ。そこで名前が挙がったのが亀田さんだったという。

飯田:亀田さん自身はベーシストじゃないですか。うちのバンドはベーシストの三島が曲を作っているし、同じベーシストで話も早いんじゃないかなという経緯もありました。

三島:時間的な制約があったので、亀田さんに曲作りのイチからスタジオ入りしていただいたわけではないんですけど。まず最初は、候補曲のなかから絞り込んでもらって、どれを土台に、どう作っていくかのアドバイスをいただいた感じですね。あとはアレンジの面でちょっとずつ助言が。

久野:アレンジ面というより一番大きく変わったのはレコーディングの仕方ですね。

三島:cinema staffのレコーディングは、これまで基本的に僕がディレクションするカタチだったんです。だから全部託してみるというのはちょっとだけ不安もあったんですよ。

飯田:でも、実際やってみたら面白かったよね。

三島:そうだね。レコーディング前には亀田さんが一緒にスタジオに入って、こちらから「ここはどうすれば良いですかね?」って聞いたんですけど、「君ら細かいね!?」とか言われたり(笑)。アレンジに関しては割とざっくりと大枠の話で、あとは任せてもらえたというか。曲の根幹の世界観っていうのは、基本的には全部僕らが考えたもので、ある程度出来たところに外堀を固めてもらった感じです。

飯田:やっぱり数々の素晴らしいアーティストをプロデュースしている方なので、そこでまず信頼感がある。自分たちの音にしても、迷った時に道筋を示してくれるというのが、安心できましたね。人柄もあって、レコーディングの環境も凄く良かったんですよ。本当に優しい方です。

──その結果出来上がった「great escape」の聴きどころは?

三島:サビの攻撃的な破壊力というか、手探りでも走って行く感じ。それと今日は骨折して対談を欠席してしまった辻のためにも言っておきますが(笑)、イントロフレーズのクリシェ(あるひとつのコードをキープしつつ、半音階や全音階の装飾的・慣用的なメロディーラインをつくる)ですね。“クリシェマニア”の僕としては気に入ってます(笑)。

──Revoさんは「great escape」を聴いてどんな印象を?

Revo:まず、そのクリシェがあって、ギターのフレーズが突き刺さってくる。それがいいなと感じましたね。で、cinema staffの曲のすべてを知ってるわけではないんだけど、他の曲と比較するとドラマチックだよね?

三島:そうですね。ここまでメロディが立った曲は、あまりなかったかもしれないです。

Revo:イントロのドラムがまたいい。このドラムが疾走感を煽りつつ、哀愁がありつつ。ベタなメロドラマにはなってない。

久野:ありがとうございます。そこらへんは僕ららしいことが出来たかなと思いますね。

Revo:面白いなと思ったのは同じメロディーでもリピートでリズムパターンが変わるところ。凄くいいよね。バンドっていう感じがする。実は、僕もそういうドラムが好きなんだよ。例えばディープ・パープルの「BURN」とか、ほとんどまともにリズム叩いてないAメロ……みたいなやつ(笑)。そういうバンドの勢いみたいなものがカッコいいと思うし。ブレイクのギターのカッティングもいいよね。

三島:あれは僕が考えたものです(笑)!

Revo&cinema staff:ははははは(笑)。

■バンドとソロでは、作ったものの“熟成度”が違う──Revo
■Revoさんの期待に応えられないかもしれませんっていう(笑)──久野

──ところで、Revoさんとcinema staffは『進撃の巨人』以前から交流があったんですか?

三島:以前からお名前は存じ上げていたんですけど、ライブを見たりしたことはなくて。<Linked Horizonトーク&ライブイベント「自由への進撃」>に参加させていただいたのが初の機会ですね。

──このイベントは7月10日〜26日まで、東名阪のZepp会場を廻る全4公演(※ファンクラブ限定公演を除く)となりましたが、いかがでした?

飯田:初日のZepp DiverCity Tokyoで初めてRevoさんにご挨拶させていただいたんですけど、凄い気さくな方で安心したんです(笑)。

三島:正直、お会いする前はちょっとビビッてましたから(笑)。

飯田:本当はイベントの前にご挨拶に行こうという話があったんです。でも先に会ってしまったら、当日話すことがなくなっちゃうんじゃないかと思いまして(笑)。

Revo:あははははは(笑)!

──Revoさんのcinema staffの印象は?

Revo:骨っぽい部分というかバンドサウンドでガツンとやってるので、ひょっとするとヤンチャな人たちだったらどうしようと(笑)。イベントでは、フリップ的なものを使ったゆるい企画にも参加してもらいたいと思っていたので、「俺たちはそんなことやらねぇよ」とか言われたらマズいなって(笑)。その辺はスタッフを通して、やれるかどうか聞いてもらったんだけど、「よくわかりません」というモヤモヤした回答がきて(笑)。

久野:ははははは(笑)。

Revo:出来ないメンバーもいるかもしれませんって。

三島:やったことがないんで、不安だったんすよ、単に(笑)。

久野:“できないかもしれません”という話はバンドのスタンス的なことじゃなくて、Revoさんの期待に応えられないかもしれませんっていう意味だったんです(笑)。

飯田:初日に参加して、空気がわかってからは楽しく参加できましたね。

──Revoさんはご自身にないなにかを、cinema staffに見るようなことはありましたか?

Revo:だからどうっていう話じゃないんですけど、曲の合間にチューニングとかしてるでしょ? それがなんかライブハウス感があっていいなとかね。僕のライブは楽器スタッフが入ってるから、チューニングした状態でギターも渡されるので。そういう姿に、cinema staffというバンドは、本当にこの4人でやってきたんだっていう歴史が見えた。それは素晴らしいことですよね。

三島:嬉しいですね。確かにゼロから積み上げてきたものがあるとは思っているので。プライドを持ってバンドをやってます。

Revo:うん。バンドとソロでは、作ったものの“熟成度”が違うんだよね。

三島:“熟成度”ですか?

Revo:僕の場合はレコーディングをしてCDを作った後、そこからライブで演奏することによって、曲が良い意味で変わっていくことがあるんですよ。でもバンドの人たちって、レコーディングの過程ですでに曲が変化してると思うんだよね。

三島:ああ、それは大いにありますね。

Revo:リハーサルとかセッションを繰り返すことでね。そこが大きく違うような気がします。たとえばビジネス的な観点で話をすると、バンドなら何度もレコーディングすることができるけど、僕らはミュージシャンを呼ぶのにお金がかかるから、キメキメのフレーズをぶっつけ本番みたいな感じで弾いてもらうことが、いつものことで。もちろん化学変化は瞬間的にあるんだけど、何度もやることでグルーヴが出てくるバンドとは違いますから。

三島:逆にいうと、スタジオミュージシャン個々の集中力というか一発勝負みたいなところは凄くリスペクトします。僕らはもう、バンドメンバー4人で行動することが生活の一部というか。そもそも僕ら、4人で一緒に住んでるんです(笑)。

Revo:え、そうなんだ?

三島:はい、1年のうち340日くらい一緒に居るので(笑)。一軒家に住んで、移動も同じ車だから、メンバー間の結束というか、“バンドのプロ”という意識はあります。ただ、プレイヤーとして個人でも頑張れるような水準まで、個々の技術を上げて行かなきゃなとも思っているんです。

──<Linked Horizonトーク&ライブイベント「自由への進撃」>はお互いにとって、いい影響を与えたと言えそうですね。

Revo:『進撃の巨人』があって出来たご縁だから、みんなで『進撃の巨人』を楽しもうという感じのイベントでしたが、真面目なことばかりじゃなく、ざっくばらんなトークも楽しんでいただけるものになったと思います。真面目なcinema staffを見て僕も初心を忘れず頑張っていこうと改めて思いました。

飯田:僕らはもうイベントの力になれるように一生懸命やっただけですね。

三島:“最後、泣くかも”っていうくらい、楽しい想いをさせていただきました。これからもRevoさんやファンの方々とそういう想いを共有できたらいいですね。

■<Linked Horizonトーク&ライブイベント「自由への進撃」>
■2013年7月26日(金)@Zepp DiverCity Tokyoレポート

<Linked Horizon トーク&ライブイベント『自由への進撃』>が7月26日、Zepp DiverCity Tokyoで行われた。このイベントは、TVアニメ『進撃の巨人』のオープニングテーマを手掛けるLinked Horizonによるもので、ゲストを迎えてのライブとトークコーナーという構成で行われるもの。7月9日(火)から東名阪のZeppをまわり、ファンクラブ限定日をあわせて8回目のこの日最終日を迎えた。

7月10日に発売された『進撃の巨人』前期オープニングテーマ曲「紅蓮の弓矢」を含む3曲入りシングル『自由への進撃』がオリコンランキング初登場2位(7月22日付け)という好セールスを受けてのこの日のイベント。夏休みに入ったこともあり、会場には開演前から10代の若者を中心としたたくさんの観客が詰めかけ、1階フロアは立錐の余地もなくギッシリと埋まっていた。

暗転した会場に流れる「Theme of the Linked Horizon」の音がピタっと止まると、『進撃の巨人』の世界観を想起させる、崩れた壁のセットの中央からLinked Horizonを主宰するRevoが登場。一斉に「キャー!」という大歓声が沸き起こる。2階席の観客も総立ちに。「紅蓮の弓矢」を歌いながら階段を降りてくるRevo。腕利きのミュージシャンで構成されたバンドのハードエッジなサウンドが観客を煽る。「今日は偉い人も沢山来ているみたいなのでいつもより大人しい団長です!」のMCに対して「えー!?いつものRevoさんが良い〜!」というファンの声。「嘘でーす(笑)!いつも通りやります!シングルがおかげさまで売れているみたいで。素晴らしい原作と応援してくれる皆さんのおかげです!」とシングルの好発信に感謝を述べるRevo。このあたりのユーモアと謙虚さが彼に熱狂的ファンがついている理由なのだろう。ESP製のオリジナル・ギター(なんと300万円!)を手に後期オープニングテーマ曲「自由の翼」を。キーボード・ソロ、ギター・ソロからRevoを中央にギタリスト3人がステージ前方に並んでのユニゾン・プレイで観客を沸かす。ブレイクすると階段上にスポットがあたりベースの長谷川淳がスラッピング・ソロを聴かせ大歓声だ。続いて柳麻美が登場し「もしこの壁の中が一軒の家だとしたら」をしっとりと、そしてサビは力強く歌い上げる。

ライブはここで一旦終わり、TVアニメ『進撃の巨人』プロデューサーの木下哲哉氏を迎えたトークコーナーへ。「アニメ進撃の巨人が出来るまで」と題して、最終日の今日はアニメと音楽の関わり、実際のシーンでの音響効果の例を出してトーク。「実際には多くの音を入れているがテレビ用に平均値にチューニングされてしまう為、テレビだと割と音が小さい。アニメBlu-rayで是非聴き比べてみてほしい」とのこと。「特に兵長のキックの音はスタジオで聴くと凄い(笑)!」という感想に笑いが起こる。7月17日に発売されたアニメDVD第1巻を巨人コスプレの“巨人君”がステージに運んできて見せる。8月に発売される第2巻のジャケットも特別にスクリーンに映され、観客から歓喜ともいえる声が挙がる。

トークコーナーが終わると『進撃の巨人』後期エンディングテーマ曲を担当しているcinema staffが登場し、転換の合間をぬって舞台袖でRevoとトーク。cinema staffというバンド名の由来について、「ギターの辻が映画館に勤めていたからというのは実は嘘です」という衝撃のカミングアウトが(笑)飛び出した後、「great escape」を含む3曲を演奏。骨折中の辻もセンターでギターを掻きむしるように弾いていたのが印象的な激しいライブだった。その後Revo率いる“鎖地平団”の団員としてLinked Horizonのバンド・メンバーの紹介から、木下プロデューサーも含む全員がスケッチブックを手に「進撃の巨人川柳」を披露。「クリスタと結婚したいよクリスタとbyライナー」や「アッカーマン結婚したいよアッカーマン byジャン」 と団長・Revo自らが例を挙げる等、大きな笑いに包まれていた。

そして、Linked Horizonのライブが再開。インスト曲「戦いの果てに」から始まり、続けてRevoが登場し、「彼の者の名は・・・」へ。ツーバスの重いリズムが重戦車が進んでくるかのようにフロアに響く。銃弾のような洪水の中にいながらクールに全てをコントロールしているかのようなRevo。まさに戦いの指揮官を観ているようだ。「最後はSound Horizonの曲を」、というと大歓声。曲は「冥王 -Θανατος-」でイベントを締めくくった。熱狂の渦の中、大きく手を振りかざす観客に感謝の言葉を送るRevo。鎖地平団の団長として観客に呼びかけ「貴様たちは何者だ?」「鎖地平団だ!」「ならば心臓を捧げよ!」「イェーガー!」とコール&レスポンス。そして最後はスクリーンに映し出されたアニメと一緒に観客が「紅蓮の弓矢」を大きな声でカラオケで歌い、盛大拍手と共に終演となった。

…かに思えたその瞬間だった。一旦暗くなったスクリーンに、「ダンッ!」という効果音と共に文字が現れ、先程までカラオケで声を挙げていた観客が一斉に静まりかえる。「あれから3年… 今宵 ついに、その沈黙を破る」 という文字と共に映像が流れ、Revoのもう一方の音楽プロジェクト“Sound Horizon”が10月9日に3年ぶりの新作をリリースすること、そして、10月26日にさいたまスーパーアリーナで『Revo's Halloween Party』と称されたイベントが開催されることが発表されると、固唾を飲んでスクリーンを凝視していた観客から一斉に歓喜の大歓声が上がり、いつまでも鳴りやまぬ拍手の中、イベントは幕を閉じた。

2時間半、ライブ、トークともに観客を満足させようという実にサービス精神に満ちたイベントだった。国民的な人気となった『進撃の巨人』というアニメに全く引けを取ることのない求心力のある作品を世に送り出しているRevoだからこそなし得たコラボレーションであり、今日のイベントの成功だったのだと思う。正直、ロック・フェスでもなかなか見ることの出来ない熱狂がそこにあった。

取材・文◎岡本貴之

2013年7月26日(金) Zeppダイバーシティ東京Set List
●Linked Horizon
1.紅蓮の弓矢(TVアニメ『進撃の巨人』前期オープニングテーマ)
2.自由の翼(TVアニメ『進撃の巨人』後期オープニングテーマ)
3.もしこの壁の中が一軒の家だとしたら
●cinema staff
4.望郷
5.君になりたい
6.great escape(TVアニメ『進撃の巨人』後期エンディングテーマ)
●Linked Horizon
7. 戦いの果てに
8. 彼の者の名は…
●Sound Horizon
9. 冥王 -Θανατος-
出演者:Vocals Revo、柳麻美
Musicians:西山毅(G)、YUKI(G)、長谷川淳(B)、五十嵐宏治(Key)、淳士(Dr)
ゲスト:cinema staff、木下哲哉(ポニーキャニオン/TVアニメ『進撃の巨人』プロデューサー)